ネットショップ「ひとてま堂」でご覧いただいている作品には、それぞれ短い文を添えています。言葉をじっくり考えていると、どうしても初めから短く書くことが出来ません。またページの都合上、その全文を掲載しきれないこともしばしばです。こちらのコラムではその文章のぜんぶと、言葉にまつわるお話など綴っています。
木の実の一輪挿しにそえる言の葉

いのちがある

こちらは、ネットショップひとてま堂「木の実の一輪挿し」ページに掲載した文章のぜんぶです。
コロンとしたカタチが、実にも、種にも、卵にもみえる。小さな突起が、芽にも、角にも、棘にもみえる。
芝真路さんの作品は、どれもそこに『いのち』があるような、そんな気になるものたちばかりです。
太陽のひかりを浴びたら起きだして、いつもどこかを転がりまわり、
夜になったら素知らぬ様子で、野菜に混じってカゴの中で寝ていたりして。

そもそもすべてが、そうした『いのち』なのかもしれません。
この世に存在するすべてのものが、とぎれることなく動き、変わっていきます。
人も草木も山も川も、たとえモノであっても、生まれ、尽きるまで、変わりつづける。
そして、ただあるだけで世界に確かに働きかける、『いのち』として。

水をゆっくり吸い込んだ種には、エネルギーが満ちています
これから形作られるぜんぶが、既にそこにあるのです
葉も、茎も、根も、花も、実も、ぜんぶ

新しい細胞が生まれるかすかな音をたてて、
その殻が破れるとき
種はもとの姿を捨てて、芽になっているのです
殻の形さえ、もう見えません

そして、最初のぜんぶを尽くして実ったとき、
また次のぜんぶをたずさえて種になっているのです
田んぼが水でうるおう季節に、そんなことを思っています

新米の季節

倉敷市玉島エリアで田んぼがうるおう季節というと、6月初旬から中旬ごろです。今年はそのあとすぐに梅雨明け宣言が出され、7月になって長雨に見舞われて、結局梅雨の時期は後から1ヶ月近く修正されるというような、いつもとちがった天候がつづきました。猛暑を経て、さらに9月には大型台風の通過があり、稲にとって2022年の気象状況は、過酷なものだったかもしれません。田植えから約5カ月、いよいよ稔ったお米が収穫され、10月「新米」として出回りはじめます。

秋祭りとばらずし

お米はもちろんのこと、さまざまな作物にとって収穫の時期が来ました。それと同時にその『いのち』を恵みとして祝う行事があちこちで行われます。
倉敷市玉島エリアでも、10月の毎週末、それぞれの地区のお宮で秋祭りが行われてにぎやかです。
祭りという形で、私たちは『いのち』のあることを喜び合うのだなぁと思います。
春に『いのち』が生まれるのを祈り、夏に『いのち』が延びるのを願い、秋に『いのち』が稔るのを感謝する。
そして祭りと言えば欠かせないのが「ばらずし/まつりずし」です。海の幸山の幸がふんだんに入ったばらずしは、この風土がもたらす『いのち』の恵みの豊かさを表すように感じます。家庭によって上に張る(のせるのではなくはるのです)具はさまざまあるようですが、酢でしめた鰆が岡山県の特徴でしょう。
大きな寿司桶に、たっぷりのお米を炊いて作る。祭りともなると、ご近所のどこからともなく手作りのばらずしが一つまた一つと届いたりして、ああ!みんな作っているんだなとうれしくなります。『いのち』あることを喜ぶ気持ちで、花をいれた一輪挿しを食卓にかざって、美味しい秋を過ごしたいものです。

参照したサイトをご紹介しますので、興味がわいた方はチェックしてみてくださいね。

●農林水産省Webサイト「見てみよう!日本各地の郷土料理: 岡山ばらずし」、日本各地の郷土料理を横断的に見ることができます。
●文化遺産オンライン「乙島祭り」、倉敷市の重要無形民俗文化財にもなっている玉島エリアの秋祭りの一つが紹介されています。