エプロンとトート(2)

先月号の続きです。

いつだったか。
倉敷の三越で、東北の手仕事展が開かれたことがあります。
それを見に行って、十和田の裂き織の作家さんと知り合いになりました。
その方が盛岡にあるギャラリーを借りてくださったので、染色の作家さんと私とで二人展を開きました。
でも、お客さんが全然来なくて・・・
しかたないのでTV局に「取材に来てください」とお願いにいったりしました。
この時、こいのぼりだった布で作ったコートを着て、さっそうとTV局まで歩いて行ったのを覚えています。
背中に鯉と武者の絵がばーんと入ったコートです。
でも、あれこれがんばりましたが効果がなくて、結局あんまり売れませんでした。
こんなふうに売れない展示会もあったのです。
ただ、帰り道で見たナナカマドの街路樹が真っ赤で、それはそれは美しかったこと、
町中の川に鮭が遡上しているのを見て感動したことは、今でもはっきり覚えています。・

展示会の場所までは、たいてい自分の車で行きました。東北や北陸もです。
その頃は今のようにナビやスマホはありませんから、紙の地図を見ながらどこへでも行きました。
洋服や数日泊まるための支度を車に詰め込んで、それこそ「行商」です。
展示会中は4、5日滞在しますが、時には販売をギャラリーの方にお任せして、現地で観光三昧だったこともあります。
地元の方においしいお店を教えてもらったり。

私が開いていた、リフォーム教室に来られていた人たちを連れて、盛岡で展示会を開いたことがあります。(この時はさすがに新幹線で行きました)
その時食べたコシアブラ(山菜)の天ぷらがおいしくて!
それ以来、春になると自生したコシアブラを探しに野山に行くのが楽しみになりました。

本当にいろんな人にお世話になりましたから、
今はそのお返しのつもりでエプロンやトートバッグを作っては、プレゼントしている日々です。

書いた人・山下宣子