日常に短歌(5)

2026年1月の短歌

毎年一月に、近所の珈琲店でコーヒーチケットを買うことにしている。昨年十一月号で詠んだ、私が「常連客になる」という野望を持って通うあの店には、事前に代金をまとめて払うことで、少しお得になる回数券があるのだ。新年に買うということもあるが、ふとこれは「予祝」っぽいなと思った。

【予祝】(よしゅく)あらかじめ祝うこと。前祝い。『広辞苑』

聞きなれない言葉だが、私は次の和歌とともに習い知った。「新しき年のはじめの初春の今日降る雪のいや頻け吉事」(大伴家持)新年に降る雪を、来たる秋の豊作の瑞兆とみなして、すでに吉事が訪れているかのように宣言して祈る歌だ。予祝的な表現の代表例として挙げられる歌であり、約四千五百首を数える万葉集最後の一首として、時間を越えていにしえから私たちへ贈られた歌だと感じる。

家持の歌に並べるのもおこがましいが、少し未来の私が美味しいコーヒーを飲めるのは良い事だし、それを十一枚のチケットは予め約束している。誰にとってもよい年になることを祈って、この歌を詠もう。

しばらくは生きるつもりで買ひておく十一枚のコーヒーチケット

書いた人・やすはら りの
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