日常に短歌(7)

やすはらりのさん3月の短歌

数年前、家にあった雛人形を近くの展示施設に寄贈した。いわゆる7段飾りというもので、人形や道具に加え、大きく重いスチール製のひな段を、1人で組み立てるのがむずかしくなっていた。あれこれ思案したが、そう決めた。

その展示施設には、同じように集まってきたたくさんの雛飾りがある。時代もさまざまで、御殿雛や壁に掛ける押絵雛など、いろいろなお雛様がいる。

もともとひな祭りは、女児の人形遊び「雛遊び」と、3月最初の巳の日に、形代(かたしろ)という人形(ひとがた)を水に流して身の汚れを祓う「上巳の祓へ」などの要素が結びついて、江戸時代に年中行事化したものだ。人形のかたちや祝い方は、少しずつ変化しているが、幼子の健やかな成長と春の訪れを祝う人の気持ちは、いまの今まで続いている。

私の住んでいる倉敷市でも、町を挙げて『ひなめぐり』というイベントが催される。家から雛人形を寄贈した施設も、毎年ひな祭りが行われ、レッドカーペットならぬ緋毛氈の上に、ずらりとお雛様たちが居並ぶ。

まだうっすら寒さの残る日、人形という私の身代わりが、広い座敷で盛大に着飾って、春を祝っている。そんな想像をする。愉快なようで、少し、悲しい。

家々から数多寄せられし雛かざり冷えた広間で春を待ちをり

書いた人・やすはら りの

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