私がここに越してきた頃は、なまこ壁の施された建物が
今より多かった。
静かな昔ながらの住宅地だから、ここが変わることなどないと思っていたのに
その気で歩いてみたら、あったはずの建物はいつの間にかなくなり、こじゃれた今風の家に替わっていて・・・
なぜか、古い建物に惹かれる。
崩れそうな状態だと、お宝を見つけたくらいわくわくする。そこまでいかなくても、年季の入った木製の窓枠など見つけたら、いつまでも眺めていたいと思うくらい。でも、「ここいらへんのこと」の記事のために
写真を撮っていると、怪しい人のようにまじまじと見られることが何度かあった。いつまでも人んちの窓を眺めていたら、それこそ通報されかねないかも。。。
いつの間にか新しい家に替わってしまったが、気になる家があった。
googleのストリートビューによれば、2013年までは存在している。
川の上にせり出すように作られた、木製の縁側のようなスペースを持つ家。
縁側はかなり傷んでいた。
下から縁側を支えるように、数本の木でできた支柱が、用水路の底に向かって伸びていたが、
水に濡れるせいか、私が気づいたころには、すでに支柱はところどころ腐って危険な状態になっていた。
その縁側の上で、古い三輪車や物干し台が雨ざらしになっていた。
そんなものが置かれているくらいだから、かつてここは人が立ち、歩いたのだろうが、
そこに通じる出入口らしきものはなかった。
入口がなくなろうとした時ですら、
三輪車と物干し台は、思い出してもらうことがなかったのだろう。
「いつか崩れる。きっと。」
通るたびにドキドキする光景だったが、気づいたら崩れるどころか、家ごとなくなっていた。
あ~、なんというか・・・・残念。
なんで撮っておかなかったんだろ・・・
今はただただ悔やまれる。
書いた人:たぐちりつこ